1970年製【FLORSHEIM】 VIRSITYタイプ KENMOOR 30679
店長青山です、
新入荷のビンテージ革靴をご紹介します。
これをお探しの古靴マニアの方も大変多い事でしょう。
ブラウンレザーのロングウイングチップ。1970年4月製のフローシャイム【VIRSITY】です。
中に記載のある2桁のアルファベットの印字は
【 D A 】
となっています。
【FLORSHEIM】の年対判別方法についてはこちらの記事を参考にしてみて下さい。
今回 お届けする内容
キメの細かい革を使ったバーシティ
このバーシティ、当時のフローシャイムの中ではレギュラーラインの扱いなのですが、それにしては革質が非常に良くマニアの評価もかなり高いです。
古いビンテージの革靴が良質な皮革を使用していたという良い例ですね。
フローシャイムの高級シリーズインペリアルのラインでは当時から【Kenmoor】というロングウイングチップがありました。
しかし、【Imperial Quality】のケンムールはシボ革を使用していますので雰囲気がまた違ってきます。
バーシティはスムースレザーがお好きな方には、たまらないモデルと言えるでしょう。
見て下さい。
若くて美しい女性のお肌のようなこのキメの細やかさを。
お手入れの際にたっぷりと保湿して頂ければ、プルプルのしっとりとした革質を堪能できます。
もちもち吸い付くような質感であなたの足を優しく気持ちよく、きゅっと締め付けてくれることでしょう。
革靴におけるトラの選び方
このバーシティ、天然皮革特有の表情でありスムースレザーならではの
「トラ」
を、サイドに確認できます。
天然皮革におけるトラとは?
トラとは天然皮革に入っている筋のようなシワの跡のことです。
特に牛の場合は
「ショルダー」
と呼ばれる首から肩にかけての部分にできる事が多いです。
動物が生きている時にできたシワの跡なので、皮革によって個体差があり同じ模様の物は決してありません。
このトラ模様は染色や型押しなど革の加工の際に消えてしまう事も多いです。
なので、天然皮革の証であるトラ模様はナチュラルな革本来の魅力としてレザー好きにはむしろ好まれています。
新品高級革靴にトラが入っている場合の選び方
トラはスムースレザーに入る牛のシワなので中古に限らず、新品の高級革靴にもその表情が見られる物があります。
シワの跡とはいえ革が傷んでいる訳ではありません。
革の強度などには全く問題がないので品質には影響もありません。
トラが見られるのは顔料などの塗料が薄い証拠でありより、ナチュラルな革本来の表情なのです。
通常、トラがある革を靴に使用する場合にはシマ模様が水平になるように使うのがセオリーです。
今回のバーシティも横方向にかけてトラが入っていますね。
つま先からかかとに向かって流れるように横向きに模様が入っている個体ならば良いと思います。
高級革靴であるほど右足、左足でトラの入り方にもバランスを合わせて製作しているはずです。
トラのある革靴を選ぶ際には参考にしてみて下さい。
【KENMOOR】か【VARSITY】か
こちらのバーシティ、実は1960年代後半にほぼ全く同じような形状で名前が変化していきます。
参考にできるのは当店のブログで何回もご紹介していますが1969年【FLORSHEIM】のカタログです。
このカタログの34ページに今回と同じ品番30679があります。
靴の形状は今回のお品とほぼ全く一緒です。
しかし、このカタログの右側に記載されている文字を読んでみると
品番【30679】はモデル名
【THE KENMOOR】
で、色は
『 Bourbon Windsor calf 』
となっていますね。
では、今回のお品はバーシティではなくケンムールなのでしょうか?
バーシティとケンムールの見分け方
カタログを見ると一見今回のモデルはケンムールのように思えますが、こちらは【VARSITY】です。
では、どこでそれを見分けるのかというと一番わかりやすい部分はメダリオンの穴飾りです。
【VARSITY】
【THE KENMOOR】
解りますでしょうか?一番簡単なポイントはここですね。
今回の革靴の形状をしている個体で、白い丸で囲ってある部分のメダリオンの穴飾りがあればその革靴はKENMOORです。
それ以外でしたらバーシティとなります。
【VARSITY】には移行期間があった?
ただ、このバーシティ、カタログの発行された年から考察するにケンムールと同時期に販売、もしくは移行期間があるように思えます。
現状確認できる限り、当店でこれまでに扱った【VARSITY】の最も古い個体は1966年12月製の物で最も新しい個体は1971年10月の物です。
1966年12月製【VARSITY】
1971年10月製【VARSITY】
これらで確認できる限り1971年まではバーシティが製造されていたと思われます。
1969年秋のカタログからケンムール名で発表されていた事を考えると少なくとも
【1969年から1971年までは移行期間】
だったのかなと推測しています。
ちなみに古着屋としてはこの年が面白いと感じますね。
くしくもジーンズの『LEVIS』が赤タブのビッグ【E】の文字をスモール【e】へと移行した期間が
「1969年~1971年」
だからです。
アメリカでウッドストック・フェスティバルが開催されたのも1969年ですし、アポロ11号でアームストロング船長が月面に降り立ったのも1969年です。
ブライアンアダムスのヒット曲も【Summer of 69】ですし、USAのOLD品を扱う者としてはなんだか気になってしまう1969年ですね。
VINTAGE LONGWINGTIPの特徴
それでは今回のお品の細部を一つ一つ見ていきましょう。
上方へ巻き上がったかかと部分の収まり
ます、一目ですぐにわかる古いビンテージロングウイングチップの仕様がバーシティには見られます。
VARSITYは1960年代位に作られたロングウイングチップの特徴を兼ね備えているのです。
つま先付近からかかとに向かって伸びてきた羽根が最後のおさまりの部分でくるりと上に向かって巻きあがっています。
『BOSTONIAN』のロングウイングチップでは1980年代にもこの仕様がありますが、基本的にはこのディテールがあると60年代位の古いビンテージの革靴となります。
レザーのトップリフトに一重の化粧釘
今回のお品、ご覧のようにアウトソールの減りも少なくカカトもオリジナルのまま一重の釘打ちがきれいに残っています。
『Imperial Quality』のケンムールだとカカトに三角形の金属製金具【V-Cleat】が付いていますよね。
しかし、VARSITYについては【V-Cleat】は最初からありません。
タン裏はフェルト仕様 青色の小窓
タンの裏はフェルトが使用されています。
レギュラーラインにつく【FLORSHEIM】のロゴと青い小窓が綺麗に残ります。
ビンテージフローシャイムの証 UNION MADEの刻印
インソールの中ほどには【UNION MADE】と数字の『2』が刻印されています。
こちらの【UNION MADE】の刻印はおよそ1960年代の【FLORSHEIM】に入っています。
VARSITYは甲の部分やかかとの履き口付近にクラックが入りやすいと言われていますが、カウンターライニングにもヒビなど全くありません。
非常に美しすぎる一足です。
レア色バーボン『Bourbon Windsor calf』
品番【30679】は『 Bourbon Windsor calf 』(バーボン ウィンザーカーフ)ですが、この色でここまで綺麗に残っている個体は見た事がありません。
ホーウィン社のコードバンでもバーボンというカラーが2年ほど前から新色として出てきていますね。
ウィスキー色の生産が難しくほとんど供給できない事から加わった新色らしいのですが薄いカラーはクオリティを保つのが大変なのでしょう。
新品に限らず、中古のお品でも薄いブラウン系の革靴を綺麗な状態で探すのは特に難しいです。
汚れが目立ちやすいバーボンカラーなどは美品を入手するとなるとほとんど履いた形跡のないものかデッドストックで探すしかありません。
しかも、すでに半世紀も昔のお品なので存在自体が珍しい。
更にサイズが合うとは限らない。。
それをふまえると今回のVARSITY。
お探しだった方からすれば奇跡のような一足だという事が理解して頂けるかと思います。
二度とは巡り合えないお品です。
サイズの合う方はぜひ一度、実物を手にしてみて下さい。
それではまた!
動画
1970年製【FLORSHEIM】 VIRSITY 30679
サイズ 9 ウィズC (目安26cm~27cmくらい)
¥37000-(+tax ¥2960-)
お勧め参考記事
合わせてお読み頂くと今回の一足に対する理解がより一層深まります。
【 今回の一足のお手入れ 】
店長青山が今回の【FLORSHEIM】VARSITYをお手入れしたクリームは
【M.モゥブレィ】
アニリンカーフクリーム
です。
アニリン染めをしたデリケートなカーフレザーであってもシミになりにくいクリームで栄養とツヤを与えてくれます。
このクリームであればまず、失敗することはありません。
絶対に失敗したくない靴のお手入れがある場合はあなたにも、これを使うことをお勧めします。
アニリンカーフクリームを布にとって革に薄く塗り込んでいき乾拭きをするだけの簡単なお手入れです。
最後にホースブラシなどで円を描くようにブラッシングしても綺麗にツヤが出て仕上がります。
参考にしてみて下さい。
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