今回 お届けする内容
レザージャケットを水洗いする方法
【Before】
【After】
店長青山です、
今回はしわくちゃになってしまったレザージャケットを洗濯機で丸ごと水洗いしてシワを伸ばしてみました。
折りジワが付いてしまった革も水分を含ませてから再び形を整えて乾かしてあげる事で、かなりの所まで復元することが可能です。
シワや汚れや臭いなどが気になってもはや着る事が無くなってしまったレザージャケットは、洗濯して丸ごと水洗いしてあげる事で再び着用出来るようになります。
新品のように、とまではいかないまでも捨ててしまうよりはましですし、どうせこのまま着ないのでしたらいっそのこと思い切って洗ってしまうのも有り、かと個人的には思います。
ですので、今回、店長青山が実験台となって洗濯機で革ジャンを水洗いしました。
動画でも途中経過をお話していきますので、その都度合わせてご覧ください。
レザージャケットが雨に濡れた場合
このように聞くと
「革のジャケットを水に濡らして大丈夫なのかな?」
と、不安になるかもしれません。
確かにレザージャケットが雨に濡れた場合など、その部分が水ジミになってしまったりする事があります。
ここで雨染みの原因となる理由をお伝えする前に、革について少しだけお話しておきます。
革というのはもともと動物の皮膚です。
女性のお肌と一緒で水分が無くなると潤いが失われてカサカサになります。
乾燥が進むと人間の手のあかぎれと同じで、ヒビが割れて切れてしまうのです。
なので、レザージャケットと言えども水分というのは絶対的に必要な要素になります。
さらに言えば、そもそも動物の皮膚であった「皮」から人間が使用する為の「革」へと変化させるためには鞣し(なめし)という作業が必要です。
その過程で皮は何か月も水の中に漬けられたり、大量の水で洗われたりします。
物によっては一年近くも水の中に漬けられていた革であったにもかかわらず、
「雨に濡れたらダメになる」
「水に濡らしたら絶対にいけない」
というのは少し考えただけでもおかしいですよね。
そういった点から考えても、むしろ
「レザージャケットには水分が必要」
という事がお分かり頂けると思います。
革ジャンが雨に濡れた時の手入れ
では、これらの点も踏まえて革の製品が雨に濡れてしまった時にはどうずれば良いのか考えていきたいと思います。
レザージャケットが雨に濡れてしまうといけない、と言われているのは基本的に
「シミになるから」
だと思います。
シミというのはそもそもどのような物かというと
「その他の部位と色が違う」
という事です。
これはなぜそうなるのかご説明していきます。
まず、雨に触れた部分の革の繊維が水に濡れた事によってふやけて緩みます。
そうすると、革の内部に含まれていた
「色を出している染料や革の油分などが水を媒体として繊維の中を移動する」
のです。
今まで繊維の中に含まれていた油分や染料などが水を媒体として革の内部から革の表面に浮かび上がってきます。
そのまま革が乾くと、今まで内部にあって見えなかった成分が革の表面に定着します。
そのため、その他の部位との色のトーンの差ができてしまい「染み」となって見える事になるのです。
では、一体、どのようにすればいいのかというと
「色のトーンの差を無くせばシミになって見えない」
という事になります。
ですのでレザージャケットの一箇所が雨に濡れてシミになりそうだったら
「水を含ませた布などでジャケット全体を拭き上げて均一に濡らしてしまう」
という方法で処置をします。
一箇所だけが濡れているからシミになって見えるのです。全部を濡らしてしまえば色の違いがわからなくなる、という事です。
かなり乱暴な考え方かもしれません。
ですが実際に革靴の場合、雨に濡れた部分をシミにさせない為にはこれと同じ方法をとります。
ただ、これもすべての革ジャンに通用するかというとそうでもありません。
レザージャケットの個体よっては染料が移動してしまうので乾いた際に逆に色のムラになってしまう可能性があります。
ジャケットを乾かす際にも問題があります。
濡れた革から水分を蒸発させ、乾燥させる速度をジャケット全体で均一にする事は物理的に難しいです。
洗濯物を想像して頂ければわかりやすいと思います。どうしても先に乾く部分と最後まで湿っている部分ができてしまいます。
そうすると結局、最後まで湿っている部分がシミになってしまう可能性があるのです。
カーフやラムなどのデリケートな皮革の場合は、乾く際にシミになる可能性が高いです。
もし、試される場合はその点を理解された上で自己責任でお願い致します。
ビンテージ「G-1」レザージャケットを丸洗い
そのようなリスクを踏まえた上でもレザージャケットを洗うというのはメリットが大きいと個人的には考えています。
タンニン鞣しで染料を使って着色してあるジャケットなどは難しいかもしれません。
でも、クロム鞣しで顔料系の着色の場合は店長青山的にはどしどし洗ってしまいますよ!
で、今回、洗濯機で水洗いしたのは1986年製アメリカ海軍実物本物「G-1」フライトジャケットです。
この年代の「G-1」の素材は牛革になります。
写真のようにかなり表面上にシワが入ってしまっています。
このように滅茶苦茶に入った折りジワですが、古着のシャツやパンツやジャケットで見た事があるかもしれませんね。
古着を販売しているお店さんでこのようなデタラメにシワの入ったネルシャツとかを見かける事があります。
これ、何でこんなシワが入っているかご存知でしょうか。
前の持ち主がずぼらな性格でめちゃくちゃな扱いをしていたからでしょうか?
実はこれ、古着業者のシステムとして取り扱いの過程でこのようになってしまうのですね。
ユーズドクロージングの業者は大量の古着を集めた時に工場でベールというパックにします。
これは巨大な真空パックのようなものでギュンギュンに圧縮した洋服たちを鉄製のワイヤーを使って専用の機械で強力にぐるぐる巻きにした物です。
洋服はとてもかさ張るのでこのように圧縮した状態にしてから船で海外に輸送したりするのですね。
このようなベールの中に入っていた洋服は圧縮されてしまっているのでくしゃくしゃになってしまう訳です。
古着屋さんによってはこのようになっている中古衣料をベール単位で購入して、お店に出すのでシワくちゃの洋服が並ぶ事になります。
これは大量に中古衣料を扱う場合に使われる手段です。
必ずしもすべての古着がこのように扱われているわけではありません。
ちなみに、古着屋ガレージセールでは先代の社長の時代から古着をベールで仕入れる事はありませんでした。
バイヤーがアメリカで一枚、一枚厳選したアイテムを丁寧に梱包して航空便で日本に送っていましたね。
今回のG-1ジャケットについてはたまたま一枚だけ入手したので洗ってみる事にしたのです。
洗剤は使わずに水だけで洗う
今回はシワを取る事が目的ですので洗濯機を使い水だけで洗います。
汚れを取るためにガシガシとウォッシュをかけるわけではありませんので、洗濯機で6分程度洗いをかけてそのまま脱水したらそれで終了です。
その際の注意点です。
洗濯機を回している時に袖などが絡まって引っ張られると弱い部分や縫い目から革が破れる可能性も否定できません。
これは革だけに限らず普通のお洋服でも同じですね。
ですので、気を使って洗う場合は洗濯ネットなどに入れてから洗うようにしましょう。
また、お風呂の残り湯などを使える場合、ぬるま湯で洗うのは良い方法だと思います。
革は大体40度ぐらいの温度で洗うと丁度良く、熱で縮む事もありません。
ただ、残り湯を使用する際は入浴剤などを入れているとその影響がないとは言い切れません。
なので、そのような点も考えて何も入れていないぬるま湯の状態で使用されると良いと思います。
洗濯機で洗った革ジャンを保湿する
はい、
という事で洗濯機で洗った状態の革ジャンがこちらです。
細かい折りジワなどが無くなっているのがお分かりになりますでしょうか?
水を含んで柔らかくなった所でシワを伸ばしながら上手く乾かして行けばこちらのジャケットも着る事ができるようになるでしょう。
で、今回は保湿を考えて乾かす前にスプレーをしておく事にしました。
スプレーで保湿しておく事で、革を一気に乾燥させず、縮みや型崩れから防ぐ事が目的です。
水洗いした事で革の内部の油分も抜けていますので、乾燥した時に固くならないようにする理由もあります。
上の動画で使用したスプレーは【WOLY】の製品でしたが現在では販売されていません。
それを更にバージョンアップさせた直接的な後継モデルがこちらです。
こちらはデリケートクリームをスプレーにした物と考えて頂ければいいかと思います。
レザージャケットのお手入れには絶対的に欠かす事のできない必須アイテムです。
カーフやラム、ムートンなどのシミになりやすい繊細な革にも使用できますのでレザージャケットをお持ちの場合はご利用になる事を是非お勧めいたします。
上が洗濯したレザージャケット【G-1】に【M.モゥブレィ】ナッパケアをスプレーして保湿した状態です。
この後、乾かしていく訳ですが水を含んで重たくなった革ジャンをそのままハンガーに吊るすと重量で下に引っ張られて変なシワができてしまいます。
ですので、床に布を敷き、中にタオルをたくさん入れて自然乾燥させていきます。
肩や袖の中などにもタオルを入れて形を整える事で、乾いた時に型崩れが起きないようにする事ができます。
今回は床に置いて乾燥させましたがハンガーで吊るして干してはいけない、という事ではありません。
その個体の状態を見て別に変なシワが入りそうもなければそのまま干して乾燥させて頂くのもありだと思います。
あまりにも重さで引っ張られるようであれば床に置いて乾かしてみて下さい。
乾燥させる際の注意点ですが、直射日光などに当てて一気に乾かすと革が縮んで型崩れする恐れがあります。
基本的に熱量を大きくして水分を一気に飛ばすと革は変形します。乾燥機などはもってのほかです。
早く乾かしたいからと言ってドライヤーの熱風などを当てないようにして下さい。
風通しの良い場所で数日間、自然乾燥させてあげるといいと思います。
ポイントとしては時折、引っ張ったりしつつ形を整えながら時間をかけてゆっくりと乾かす事です。
革は基本的に水を含んで乾く時に縮もうとします。
ですので、まだ多少水を含んでいて乾き切る前の段階で少し伸ばしたりしながら形を整えてあげる事でキレイに仕上ります。
オイルを塗って保革をする
こちらが丸一日置いて乾かしたレザージャケットです。
【洗う前】
最初の段階と比べて大分シワが取れているのが写真からも分かるかと思います。
ここから最終的な仕上げとしてオイルを入れて、保革をしていきます。
今回使用するのはミンクオイルです。
普段だと店長青山はレザージャケットの手入れにミンクオイルを使用しないようお伝えしています。
しかし、今回は革ジャンの洗濯という通常のお手入れとはまた違った工程を行ってきました。
革から油分が普段以上に抜けてしまっていると思います。
ですので今回は100%動物のミンクの脂であるピュアミンクオイルを使用してお手入れをしていきます。
100%ピュアなミンクオイル
ここで注意して頂きたいのはミンクオイルの種類です。
ミンクオイルというと有名なのは黄色っぽくて缶に入っているようなお品かと思います。
しかしこれは、石油を化学合成してペースト状にした物をミンクに混ぜて作ったオイルです。
このオイルですと、ジャケットがベタベタしてホコリが付きやすくなりますし伸びが良くないので必要以上に油を塗りたくる事になりかねません。
そうすると、カビが生える原因の一つとなります。
では、どのようなミンクオイルを使用すればいいのかというと
【M.モゥブレィ】
ピュアミンクオイル
です。
こちらのオイルは100%動物のミンクの脂からできていて白い色をしています。
もともと動物の油ですので動物の皮膚である革に対してすんなりと浸透して行きます。
塗る時は指で取ると体温で程よく溶けてくれますのでそのまま革に薄く伸ばして広げていく事ができます。
薄く伸ばす事ができ、スムーズに革に浸透してくれるので必要以上に脂を塗り過ぎる事がありません。
適度なオイルアップができるので余分な脂を塗り過ぎてカビが生える原因となる心配が無いのです。
革ジャンの臭いやカビを除去
と、いう事で今回は革ジャンを水で丸洗いした後に干してオイルを塗ってみました。
【Before】
【After】
【洗う前】
【洗った後】
いかがでしょうか?
見違えるように綺麗になりましたね。これならばシワを全く気にする事なく着て頂けるかと思います。
レザーのジャケットを洗う事には他にもメリットがあります。
今回はシワを伸ばす事を目的としましたので洗剤は入れませんでした。
しかし適切な洗剤を利用すれば汚れや臭い、カビなどを除去する事も可能になります。
一般的に革のジャケットをお手入れする際には街のクリーニング屋さんに出す、という方が多いと思います。
革のジャケットのクリーニングは大体一回に付き、6000円~位の料金がかかります。
ちょっとしたものでしたら1万円くらいは簡単にしてしまいます。
しかし、基本的にクリーニング屋さんに革製品を出すとドライクリーニングで処置をしてくれるのです。
ドライクリーニングとは石油系の有機溶剤を使用して水を使わずに洋服を洗う方法です。
型崩れしない、色落ちが少ないなどのメリットがあります。
しかし、クリーニング屋さんに革ジャンを出すとカビが落ちていない、臭いがとれていないというケースが結構あります。
一万円近くお金を払っても「当社ではこれが限界です」と言われてしまうのです。
それは致し方のない事です。クリーニング屋さんは悪くありません。
お客様の大切なレザージャケットを預かって水洗いをした上、それを台無しにする訳にはいかないからです。
革を水に濡らせば目に見えるかどうかは別として必ず収縮を起こします。
お客様からの預かり物に何かあったら訴訟を起こされる可能性だって否定できません。
クリーニング屋さんはリスクを取ってキレイにする事にトライするよりも、臭いや汚れは取れなくても必要以上の事はしない、という立場なのです。
カビたライダースも洗う事ができる
なので、革のジャケットをクリーニング店に出しても、満足のいく結果になるかどうかは正直わからない、というのが店長青山の見解です。
しかし、もしあなたが自分で全ての責任を取る事ができて、手間を惜しまずチャレンジすることが可能であれば革のジャケットは簡単に自宅で洗う事ができます。
このままでは、臭いが取れず着る事すらできないジャケットや、クリーニングに出したけどカビが取れずに諦めている革ジャンは処分するしかありません。
「どうせもう、捨てるしかない」
と言うのであれば捨てる前にダメで元々で洗ってみるのも一つの手だと思います。
現在は洗濯用洗剤も色々あるように実は革のジャケットを洗うそれ専用の洗剤もあるのです。
大事にしていた革ジャンを諦めて捨てるぐらいだったら一回試してみるだけの価値は充分すぎるほどあります。
レザージャケットを自分で洗ってみるという未知へのチャレンジは不安だと思います。
しかし、実際にやってみるとパラダイムシフトが起こります。
いかに自分が世の中の固定概念にがんじがらめになっていたのかが解るような不思議な体験ができると思います。
「革って普通に洗えるんだ・・。」
という目からウロコの体験をしてみるのはちょっとした冒険であり、カルチャーショックであり、すごく面白いですよ!
「人生で起こる事は全て自分の責任だ!
てめぇのケツぐらい、自分で拭けらぁ!」
というあなたは自己責任で是非お気に入りのライダースを洗ってみて下さい!
「え、どうしよう。。。僕ちゃん不安・・・」
というあなたはママと一緒にクリーニング屋さんへ持って行って下さいね。
それではまた!
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