60s【Leverenz Shoe Company】Cushion Flex
LONG WINGTIP
青山健一です、
今回は非常に珍しいビンテージ革靴を入手しました。
1960年代製【Leverenz Shoe Company】(レヴェレンツ シューカンパニー)のロングウイングチップです。
今回 お届けする内容
【Jung Shoe Manufacturing Company】( ユング シューカンパニー)とは
【Leverenz Shoe Company】(レヴェレンツ シューカンパニー)
は 1919年にアメリカのウィスコンシン州、シボイガンで設立された会社。
母体となった会社は、1892年創業された
【Jung Shoe Manufacturing Company】( ユング シュー マニファクチャリング カンパニー )
です。
Jung Shoe Manufacturing Company は 同じくSheboygan, WISCONSINにあった【Twig Shoe Company】 (トゥイッグ シュー カンパニー)を買収、1919年に【Leverenz Shoe Company】 を設立しました。
色々な名前の靴メーカーが出てきますが、このウィスコンシン州シボイガンは靴の製造都市として有名な所でもあります。
Jung Shoe Manufacturing Company の『Billhead receipts』
『JUNG SHOE COMPANY』BILLHEAD RECEIPTS
こちらは1919年1月29日の日付が入ったユングシューカンパニーのビルヘッド レシート。
1919年にはこの地で事業が行われていたことが確認できますね。
ちなみに『Billhead receipts』とはアメリカで1860年代後半から1940年代前半ぐらいにかけ、ビジネスの取引で一般的に使用されたレシートです。
会社の住所と名前や請求書番号などが記載されているものですが、当時のビルヘッドには多くの場合、レターヘッド部分に会社のイラストが入っているのが特徴的です。
この手のレシートがある会社は、それだけでこの年代にはすでに存在していたことがわかるので年代判別の手掛かりになります。
1914年【The Dry Goods Reporter】の【Twig Shoe Company】AD
さて、
【JUNG SHOE COMPANY】が買収した【Twig Shoe Company】ですが、1914年の書籍【The Dry Goods Reporter】には以下のような広告が掲載されています。
広告の下には
TWIG SHOE CO., Sheboygan,Wis.
と記載があるので、シボイガンにあった同郷の会社を買収したことがわかりますね。
【Jung Shoe Company】の工場が今ではアパートに
こちらは1910年のユングシューカンパニーを描いたイラスト。
【1910年】Jung Shoe Company
この建物は今でも現存しています。
【現在】
620 South 8th Street, Sheboygan Falls, WISCONSIN
この建物、先ほど見ましたね?
ビルヘッドレシートに記載されていたイラストと全く同じです。
ちなみにこちらは元工場なのですが、この建物は1992年に【National Register of Historic Places(アメリカ合衆国国家歴史登録財)】に指定されています。
アメリカでは古い建物を文化財として保護していたりするんです。
1906 年に建築家の 【William C. Weeks】 によって設計、建設されたこちらの建物は文化遺産として保護されているんですね。
今では【Leverenz Apartments】として、集合住宅となり貸し出されています。
昔の工場がアパートメントとして改装され、現在も使われているなんて素敵です。
そして、こちら。
620 South 8th Street, Sheboygan Falls, WISCONSIN
同じく8th Streetの近くにあったLeverenz Shoe Companyの会社の建物ですが、【The Leverenz Building】も現在ではアパートメントとして貸し出されていますよ。
【She – boy – again.】が SHEBOYGAN の由来となったお話
で、面白いのがですね。
こちら、シボイガンにあったとされる 【SHEBOYGAN BOOT AND SHOE COMPANY】の1891年広告。
で、この広告の右下のイラストを見て下さい。
なんだか上の方におもしろい一文が記載されてますね。
She – boy – again.
Origin of the name of the
CITY OF SHEBOYGAN.
ですって。
これ、シボイガンという地名の由来となったお話ですが、この地にインディアンの酋長さんがいたそうです。
彼には息子が多くいたのですが、娘がいなかったので彼はぜひとも女の子が欲しかった。
で、彼の奥さんが新たに男の子の赤ちゃんを産んで彼に見せた時、女の子が欲しかった酋長さんは、
「She – boy – again.( 彼女はまた男の子だ。。)」
と言って嘆いたそうです。
ね、奥さんが赤ちゃんを差し出して見せてるでしょ?
その逸話が、この地の名前になったという。。
She – boy – again. ⇒ SHEBOYGAN.
なんという、でたらめな名前の街だ!
で、この建物ですよ。
あれれ、良く見たらこれって?
はい、先ほど紹介したアパートになっている【The Leverenz Building】 と完全に一致ですね!
と、いう事は【SHEBOYGAN BOOT AND SHOE COMPANY】も【JUNG SHOE COMPANY】に関係していたか、もしくは一つのブランドだったという事かな?
ただ、わからないのはこの広告、1891年のものとされているんですけれども【JUNG SHOE COMPANY】が創業されたのって1892年なんです。
なので、この広告が出典された年の記録がそもそも誤っているのかもしれません。
もしくは【SHEBOYGAN BOOT AND SHOE COMPANY】の方が、この地に古くからあった会社なのか?
その辺りの詳細は良くわかりません。
現地には【The Sheboygan County Historical Research Center 】というシボイガン群歴史研究センターがあるようなので、ご興味のある方はぜひ、そちらにおもむいて調べてみて下さい。
わかったら、教えてくださいね。
なんだか、ここまでいろいろ出てきてしまったので、少しまとめてみましょう。
こんな感じでしょうか?
靴の製造都市として有名なウィスコンシン州シボイガンですが、ほとんどの会社が今回ご紹介する革靴メーカー【Leverenz Shoe Company】に関係していると思われます。
それだけ、影響力のある会社だったにもかかわらず、日本ではほとんど知られていないのというのも興味深いです。
アメリカって本当に大きいですし、アメリカ古靴って奥が深いですよね。
60年代【Leverenz Shoe Company】LONG WINGTIP
で、やっと今回の革靴、Leverenz Shoe Company (レヴェレンツ シューカンパニー)の紹介です。
前身の会社【Jung Shoe Company】の説明だけでここまでかかってしまいました。。
今回の一足は、非常に状態の良いグレインレザーのシボ革です。
つま先が若干セミスクエアトゥになっているのもクラシックな面持ちですし、足幅の広い日本人の方でも履きやすい形でしょう。
革の表情、雰囲気もすごくいい感じです。
1960年代以前に見られる特徴的なロングウイングチップのディテール
そして今回特徴的なディテールはこの部分。
つま先付近からかかとに向かって伸びてきた羽根が、最後のおさまりの部分でくるりと上に向かって巻きあがっていますね。
これはアメリカの古いロングウイングチップで見られる形です。
普通のロングウイングチップの場合はこの部分が真っすぐに後ろまで伸びてきて、カカトで収まります。
【普通のロングウイングチップの形】
【古いロングウイングチップの形 】
『BOSTONIAN』では1980年代にもこのように巻き上がった仕様のロングウイングチップが存在します。
ですが、一般的にこのディテールがあるロングウイングチップは60年代位の古いビンテージ仕様となります。
なので、このディテールのある革靴を履いている人がいれば、半世紀以上も昔のビンテージ革靴を所有している通な人だと、一撃で分かってしまうわけですね。
UNION STAMP Factory 382 でメーカー判別
さて次に特徴的なのは、インソックに印字されたハウスマーク型のユニオンスタンプです。
Cushion-Flex という文字の下に入っている奴ですね。
画僧をさかさまにしてみましょう。
これです。
このハウス型とも呼ばれる形のユニオンスタンプは1960年代から1970年代初頭まで使用されていたものです。
なので、年代判別の基準ともなります。
多くの場合は、だいたい1960年代と考えてよいでしょう。
そして今回の品には
BOOTS & SHOE
WORKERS UNION
UNION STAMP
Factory 382
と入っています。
ここでいう「ユニオン」とはアメリカの労働組合の事です。
日本だと労働組合が会社ごとにあったりしますが、アメリカは業界ごとに組合に入ります。
このスタンプは ブーツ&シュー ということで靴関連の組合ですね。
ユニオンスタンプについては2015年に書いた記事(古い!)がありますのでそちらを参考にしてみて下さい。
で、今回の革靴が【Leverenz Shoe Company】ブランドのものだと判別できる箇所がこのファクトリーナンバー382なんです。
ファクトリーナンバーは、その製品を作っているメーカーごとにあてがわれているので、番号が解ればその革靴の会社も分かるという仕組みです。
レヴェレンツ シュー カンバニーは番号『382』なので、今回の品が特定できます。
【Leverenz Shoe Company】が使っていた名前
あとメーカーを判別するのに利用した箇所は、先ほども出てきた【Cushion-Flex】の文字です。
実は【Leverenz Shoe Company】はいろいろな商標をかつて持っていたようで【Cushion-Flex】はその中の一つなんですね。
なので、今回の革靴ブランドが特定できるという訳です。
他に【Leverenz Shoe Company】が利用した名前には【Morgan Quinn】【Continental】【Calumet】【Kushion Kings】などがありました。
定かではないのですが、【Continental】というのは女性物の革靴などに使用していたブランド名なのかもしれません?
1900年代前半の革靴ブランドでそのような物があったように記憶しています。
あと、【Morgan Quinn】に関しては日本の老舗靴メーカー「マドラス」が一時期、商標を持っていましたね。
調べてみるとモーガンクインはアメリカで、1971年6月8日に登録されていて1992年11月4日 に商標権が消滅しています。
なので、日本のマドラスは1992年以降に商標を獲得したという事でしょう。
マドラスでは「履いて実感できるクッション性」を売りとして、プラット製法の靴を販売していたようです。
使用感の少ない半世紀前の劇レアな革靴
と、いう事で今回の革靴の歴史をいろいろと見てきましたが、とにもかくにも、実際の現物ですよね。
本当にコンディションが良いグレインレザーのビンテージで超絶おススメです。
アウトソールの減りも少なくとてもきれいな一足です。
インソックの前方は特徴的なカーブで切り込みがあります。
【IMPROVED ARCH for Support and Comfort】
土踏まずの部分を持ち上げており、歩く時と履いた時の心地よさをサポートしています。
日本で紹介されることの少ない絶滅革靴ブランド
もしかしたらあなたは今回初めて、この【レヴェレンツ シューカンパニー】というシューメーカーを聞いたかもしれません。
それもそのはずで、このブランドが日本で紹介される事はほとんどありませんし、なんなら今回のこのブログが現時点だと日本で一番詳しく【Leverenz Shoe Company】について書かれた記事かもしれません。
それだけ日本にはこの革靴が入荷してきていないという事でしょう。
【Leverenz Shoe Company】がいつまで存在していたかというのは、諸説あるようなのですがアメリカでの記録を探してみると
25 April 1990 (1990年4月25日)
30 July 1993 (1993年7月30日)
に会社が解散されたとされる2つのデータが出てきます。
どちらが正しい記録なのかは不明です。
しかし、もっと後の年代まで存在していたような記述もありますし、詳細に関してはわかりません。
ただ、恐らく今現在、すでに存続していない会社、というのは確かなんじゃないかなと思います。
要するに激レアメーカーの絶滅ブランド革靴という事になりますね。
今回ご紹介するこの一足、このコンディションのこのサイズで履いている人は、日本には他にいないかもしれません。
まさしく一点物!
金さえ払えば手に入る、というような品物ではございませんので、今回限り、最初で最後のチャンスです。
あなたが入手する事あれば、このモデル、このサイズで日本唯一のオーナーかもしれませんね???
ご興味があれば是非一度試着してみて下さい。
それではまた!
60s【Leverenz Shoe Company】Cushion Flex
【IMPROVED ARCH for Support and Comfort】
LONG WINGTIP
サイズ 7 1/2 ウィズ EE
(目安25.5 cm ~26.5 cm 位)
¥32000-(+tax ¥3200-)
【今回の革靴のお手入れ】
今回は【Leverenz Shoe Company】のお手入れに【ENGLISH GUILD】の Bees Rich Cream を使用してみました。
【ENGLISH GUILD】Bees Rich Cream
最近は古いビンテージ革靴にはイングリッシュギルドのビーズリッチクリーム(ニュートラル)を使うことが多いです
ビーズリッチクリームが革の内部に浸透して革本来のしなやかさを引き出してくれるので愛用しています。
激レアビンテージ革靴にも実力をいかんなく発揮してくれる高級クリームです。
まだ、使った事の無いあなたには是非お勧めいたします。
イングリッシュギルドは靴好きの人間の中で非常に評価の高いクリームです。その実力に関しては詳しく紹介した記事がありますのでそちらをご覧ください。
博物館級ビンテージ【FLORSHEIM31836】をイングリッシュギルドでお手入れしてみる
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