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青山健一です、

先日、アメリカから中古革靴を新入荷しました。

 

今回の入荷について感じた事がありましたので、お伝えしておきたいと思います。

 

現在の世界情勢も踏まえて鑑みるに、中古革靴の業界も今後市場の流れに変化が出そうな感じがしますので、緊急レポートをお送りします。(※2022年7月16日現在)

 

詳細はこの後記載するのですが、結論を先にお伝えしておきます。

 

【結論】

業界的にアメリカから新規で入ってくる中古革靴が減少する可能性が高い。

【影響】

市場的には国内に現存しているアメリカ古靴を回していく傾向が加速するかも。

市場におけるレアなビンテージ古靴の在庫が枯渇していく。

【結果】

古き良いビンテージ品ほど値上げしていく可能性。

 

今回はガレージセール青山がどうしてこのような考察に至ったのかのお話を、根拠と共にお伝えしていきたいと思います。

 

【検証】アメリカ古靴を取り巻く現状

 

 

さて、夢見る乙女な古靴ファンには大変申し訳ないのですが、身もフタもない超現実的な事実からお伝えしましょう。

 

これからお伝えするいくつかの事実から導き出されるのは、アメリカ古靴の日本市場はここから停滞して、古靴の価格は高くなっていくだろうという仮説です。

 

今回、渡米していた革靴のバイヤーさんから品を送ってもらったのですが、商品価格が約30%ほど値上がりしています。

 

この理由についてはいくつもの要因が考えられるのですが、一つだけ確かな事は

 

【本来30%程度では、商品価格の上昇が押さえられる状態ではない】

 

という事です。

 

要するに、今回の入荷に関してだけ言うと、当店専門の革靴バイヤーさんが

 

『自らの利益を減らして泣いてくれている』

 

状態になります。

 

それらの理由についていくつか深堀りしてみたいと思います。

 

・円安

・原油価格の高騰

・世界的な穀物の不足

・アメリカのインフレ

 

などをふまえてアメリカ古靴への影響を考察していきます。

 

 

【 日本は世界的に見て異常なデフレ状態 】

 

ここ数十年、国として経済成長していない日本に暮らしていると、まったく状況が解りませんが、世界的に見て日本の物価安は異常です。

 

ちなみにニューヨークに出店されているご飯処の【大戸屋】さんでサバの塩焼き定食を食べるといくらになるのかという話があります。

 

サバの塩焼き $26

+ 定食セット $4

= $30

+ニューヨーク税率 (州税+市税) 8.9% $2.67

= $32.67

+ 外食でのチップ 20% $6

=$38.67

× 1ドル 138円

5336円

 

サバの塩焼き定食を食べるのに五千円以上かかるというお話です。

 

ちなみにニューヨークだから特別高いのでは?という気もしますよね。

でも日本が異常なくらい物価が安いというのは世界的な事実です。

オーストラリアのシドニーで【やよい軒】さんのサバ定食を食べても2500円くらいにはなるはずです。

 

 

【 世界的な穀物不足と水不足 】

 

「じゃあ、米がだめならパンを食べればいいじゃない?」

 

と、思われるかもしれませんが現在は世界的な穀物不足です。

 

現在戦争が行われているウクライナは世界の穀倉地帯であり、小麦が輸出できなくなっているため日本でも食料品に影響が出ています。

 

「ならば戦争が終われば小麦の価格も落ちついてくるのか?」

 

かというと、事はそんなに単純じゃありません。

 

実は世界中の穀倉地帯は既に深刻な水不足になっています。

 

これは中国の旺盛な需要に支えられた関係で、一帯の地下水を吸い上げすぎて、もはや穀物を育てる水が枯渇してきているという現象です。

 

なので、小麦の価格は今後容易には値下がりしないと思います。

 

古靴の価格についての話をするはずなのに、何で食べ物の話をしているのかというと

 

『 原価とは商品販売までにかかるコストの合計 』

 

の事だからです。

 

アメリカ古靴の原価とは「革靴の仕入れ値」に渡航費、滞在費、輸送費など、もろもろの経費がプラスされたものになります。

 

現在は穀物に加えて【 原油 】も高くなっていますが、そうなるとアメリカへの渡航費や、商品をアメリカから日本へ送る輸送費、さらに日本国内での運搬費のコストも増加します。

 

そしてバイヤーさんがアメリカ国内で仕入れを行うための滞在費も、とんでもなく高くなってしまうのです。

 

滞在中の食費もそうですし、商品買い付けのための移動手段として車を使用しますが、現在はアメリカ人が車の移動を控えるほどガソリン高です。

 

このようなもろもろの経費も古靴の価格に影響を及ぼしてくるのです。

 

 

【 円安という為替の影響 】

 

 

古着屋ガレージセールの革靴は、当店だけに革靴をおろしてくれている専属のバイヤーさんが全てアメリカ本土で仕入れてくれています。

 

巷に多い、日本のお客様から買取を行っているリサイクル型のお店とは根本的にビジネスモデルが違うのです。

 

その分、他のお店様とは全く違った秀逸なアイテムをご提供できているという自負があります。

 

ただし、その分、為替の影響をモロに受けてしまいます。

 

2021年1月初頭には102円台だったドルも、今週木曜日の2022年7月14日には139円台を付けています。

 

ざっくりと計算しただけでも、たった一年半で135%の上昇です。

 

日本に暮らしている人がアメリカからの輸入品を購入しようと思ったら、基本的に35%値上げされていなければ、今後その品は日本に入ってきません。

 

なので、今回当店のバイヤーさんが仕入れてくれた品が3割ほど値上げされていたのは商品の仕入れ値だけで言っても、当然なのです。

 

 

【アメリカとの金利差で円安が更に進む可能性 】

 

さらに、それに加えてアメリカの高騰するインフレ率があります。

 

今週の7月13日に発表されたアメリカの消費者物価指数は前年比 9.1%増。

 

インフレ率が 9.1% という1981年11月以来、なんと41年ぶりの事態となっています。

 

当然、アメリカのFRB=連邦準備制度理事会はインフレを抑えるため金利の更なる利上げをするでしょう。

 

対する日本は6月の金融政策決定会合で金融緩和を続ける決定をしていますから、アメリカとの金利差が開く一方です。

 

そうするとどうなるか?

 

アメリカとの金利差が開けば、円を売ってドルを買う流れができますから

「 円安が加速する」

のが基本的な市場の動きです。

 

今後ドル円相場は

1ドル = 140円台

に入って行くと考えても不思議ではないでしょう。

 

生活の全てにおいて輸入物質に頼らなければ成り立たない日本では、今後、輸入商品全般の値上がりは避けられない状況にあると言えます。

 

 

【 日本におけるアメリカ古靴の今後 】

 

これらの事をふまえて今後のアメリカ古靴の状況を考察してみます。

 

基本的な流れとしては、輸入品のコストが高くなるのでアメリカから日本に入ってくる中古革靴の量が減る事が考えられます。

 

現在の状況を考えてみると、輸入古靴の価格はおととしに比べて

【50%の値上げ】

を商品価格に設定しないと、販売側はかつての輸入ビジネスが継続できない状況にあると思います。

 

 

ですが、おととしから急に 【1.5倍になった値段 】を吸収できるだけの余裕が現在の日本のお客様にあるかというとそうは思えません。

 

なので、売れないものは仕入れられませんので 古靴の輸入量そのものの減少 が予想されます。

 

中古革靴の輸入量が減少するとどうなるか。

 

アメリカ古靴を欲しい方は、現在日本に存在している現物を取引していくことになります。

 

在庫量が決まっている品を、市場で回して行くわけですから当然品が薄くなってきます。

 

更には

新品の高級革靴の値段が高騰しすぎて買えないという理由で、今まで高額な新品革靴を購入していた客層の一部が中古市場に流れてくると仮定すると。

 

今後、アメリカ古靴が急速に値崩れすることは考えにくいです。

 

市場の原理に沿って考えれば

「アメリカ古靴の値段は今後上がっていく」

とするのが当然の結論かと思われます。

 

もちろん、市場に【絶対】という事はありえません。

 

この先、アメリカ古靴の価格が安くなるという未来が絶対ないとは言い切れないのですが、素直に考えれば当面の間、輸入される新規のビンテージ古靴は高くなると考えて良さそうです。

 

【古靴ファンは今度どうふるまうべきか】

 

これらの事から日本におけるアメリカ古靴ファンは今後どうしていけばいいのでしょうか。

 

青山の個人的な見解をお伝えすると

「 気になる品があれば、買える値段で存在するうちに手に入れておいた方がいい」

と思います。

 

販売する側がこのような意見をお伝えすると完全にポジショントークとなってしまう事は理解できます。

「お店の方から、購入をあおっちゃダメでしょ?」という話です。

確かにセールストークととらえられても無理はありません。

 

ですがアメリカ古靴を2000足以上、たった1人で販売してきた立場で率直に言わせてもらえば、アメリカ古靴を取り巻く環境は

「現代の日本人がかつて経験したことがない状況」

というのは間違いなさそうです。

 

急速な円安、アメリカのインフレだけでも過去30~40年間、無かった出来事ですし、世界的に深刻な穀物と水の不足というのは増えすぎた人類がかつて経験したことのない出来事です。

 

コロナのパンデミックを挟んで世界は変わりました。

一昨年と現在とは同じ世界ではありません。

これは事実ですので、受け止めざるを得ません。

 

でも、人間が生きていくうえでは、食べたり、飲んだり、楽しんだりという行為は絶対に必要です。

 

人が動物として存在している以上、たとえ世界が変わろうと、生きがいを求める人間の本質は変わっていません。

 

なので、こんな状況だからこそ、

 

あなたが古靴を好きだったのなら、革靴を愛でる時間を大切にすべきです。

 

現代社会でも人間が歩いている以上、靴は絶対に必要なのですから、どうせならこれからもずっと楽しんで付き合ってみてください。

 

今回はアメリカ古靴という切り口でお伝えしましたが、かつてとは違った世界をふまえた上で

 

あなたの人生における、かけがえのない素敵な時間を楽しんで過ごして頂けたら

 

と思います。

 

今回のレポートは以上です。

それではまた!

 

PS、

今回仕入れ価格は30%値上がりしていましたが、お店で販売している商品に30%の値上げを転嫁してはいません。

だいたい、今までと同じくらいの値段設定としています。

ちょぴっとだけ、高くなってしまうものもありますが、革靴のコンディションを見て下さい。

かなり素晴らしい状態ですし、さらに一般の市場価格と比べたら充分にお値打ち価格を堪能していただけるかと思います。

 

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