今回 お届けする内容
英国が誇る老舗タンナー
【 THOMAS WARE & SONS LTD 】
店長青山です、
当店ではレザーのアイテムをお取り扱いしておりますが特徴的なイギリスのレザーが
【 THOMAS WARE & SONS LTD 】
(トーマスウエア&サンズ)
のブライドルレザーです。
ブライドルレザーという革については下の記事で詳しくご紹介していますので参考にしてみて下さい。
さて、このトーマスウエア&サンズ社。
革においては世界的に有名なブライドルレザーの製造会社なのですが一般のお客様にはあまりなじみがないと思います。
ですので、今回はこのトーマスウエア&サンズ社についてご紹介していきます。
革のタンナーとは
トーマスウエア&サンズ社は英国のロンドンからちょうど西に向かって200キロほど離れた街、ブリストルに存在します。
1840年に創業され今日まで177年間続く老舗のタンナーです。
タンナーとは動物の皮膚である
『 原皮 』
の状態から製品に使用される
【 革 】
の状態まで鞣し(なめし)と呼ばれる工程を皮に施して変化させる業者の事です。
一般的にレザーの製造業者と呼ばれる会社には3種類あります。
●「 Tanner 」タンナー
原皮をなめして革にする業者
●「 Currier 」カリアー
なめされた革をタンナーから仕入れて来てそれに染色やブライドル加工を施して仕上げる業者
●「Finishers」フィニッシャー
タンナーやカリアーが作った革を仕入れた後、納入先の希望に合わせた色を染色したり型押し加工などをして製品化する業者
の三種類です。
このどの工程を行う業者も革の製造会社と言えるのですが今回のトーマスウエア&サンズ社は「タンナー」だけではなく自社だけで革を製品化して納入できる企業なのです。
革のなめし(鞣し)方法
「革」を「柔」らかくすると書いて『 鞣す』(なめす)という文字になりますが皮をなめす目的としては
「腐らなくする」
「柔らかくする」
「丈夫にする」
などが挙げられます。
動物の生の皮のままでは腐ってしまって日常の用途で使用できないので、古来より人類はこの「なめす」という工程を行ってきました。
なめしの作業の際には鞣し剤を使用して行うのですがその種類には現在大きく分けて2つの方法があります。
ベジタブルタンニンなめし
植物に含まれているタンニン(渋)を使用して皮をなめす方法。古来から人類が用いて来た鞣し方法です。
特徴としては革を使用していくうちに経年変化が出て、独特の風合いが楽しめるという事があります。
植物由来のタンニンを内部まで深く浸透させることで革は厚く堅牢でコシがある仕上がりになります。
鞣し後に着色をしていないヌメ革はこの植物のタンニンの色をしています。
タンニン鞣しで出来た革製品は切り口にコバ磨きの手法を施すことで断面を美しく仕上げる事ができます。
また、植物からとられた鞣し剤なので人体にもやさしく、アレルギー反応を起こす心配も少ないです。
タンニンなめしの革は燃やしても灰になるだけなので安全ですし環境面からも優れています。
一方で、鞣して革にするまでの時間がかかる事や、製法により広い場所を必要とします。
手間がかかるため大量生産できないのでコストがかかり製品の値段が高くなってしまう革でもあります。
●クロームなめし
塩基性硫酸クロム塩という金属由来の化学薬品を鞣し剤として使用する事で革をなめす方法。
ドラムと呼ばれる和太鼓のような形の大きな樽に皮とクロムの薬品を入れて洗濯機のようにグルグル回し、遠心力を用いて鞣し剤を皮に浸透させます。
大量生産に向いているうえにかなり短期間で革に仕上げる事ができるので低コストの製品を作ることができます。
現在世の中で使用されている工場製の革製品のほとんどはこのクローム鞣しで処理されています。
クロム鞣しを施した革は「ウェットブルー」と呼ばれる水色がかった革に仕上がります。
この事からクロム鞣しの革の切り口は着色などの処理をしていないと断面が青白色になっているのです。
クローム鞣しの革は薄くて伸縮性があり耐熱性にも優れています。
一方で、化学薬品を使用するために燃やすとクロムが有害な物質に変化するなど、環境への影響も心配されます。
一般的な革製品を捨てる時になぜ「不燃ごみ」として扱う自治体があるのか不思議に思った事はありませんか?
これはクロムなめしで生産した革を燃やすと「六価クロム」と呼ばれる猛毒の物質が発生するからなのです。
タンニンなめしのトーマスウェア
ベジタブルタンニンでもドラム製法で皮をなめすことは可能なので現在ではタンニンなめしのほとんどがドラムで鞣されています。
しかし、トーマスウエア&サンズ社は昔ながらのピット槽に漬けるという方法で時間と手間をかけ、タンニンなめしを皮に施しているのです。
ピット槽とは
ピット槽とは写真のような2m程の深さのある水槽の事です。
このピット槽に濃度の事なるタンニン溶液が入っておりうすい濃度から順番に濃い濃度の水槽に漬けていきます。
時間をかけて内部までタンニン成分を浸透させる為、皮に負担が少なく、丈夫で厚い革を作ることができます。
ピット槽に皮を漬けている期間は最大で13か月ほどにもなります。
現代のドラム製法で行うクローム鞣しは1日~5日ほどで仕上がるのに対してはるかに時間がかかるのです。
また、ピット槽を使用するにはかなり広い場所が必要です。水槽を移しながら皮を漬けていくので手間も非常にかかります。
大量生産できない上、コストが高くなる事などから現在ではピット槽でタンニン鞣しを行う会社は少なくなっているのです。
いかにピット槽でなめされた革が貴重な品なのか想像できると思います。
現在英国ではベジタブルタンニンなめしを行う大きなタンナーが3つほどあります。
その中でもトーマスウエア&サンズ社は老舗かつ最大規模の会社となります。
英国タンナーの中でもタンニンなめしを行う会社としてトーマスウエアと同じくらい老舗で有名な
Joseph Clayton & Sons Ltd
(ジョセフクレイトン&サンズ社)
という会社があります。そのクレイトン社でも所有しているピット槽は80個程です。
それに対してトーマスウエア&サンズ社は400個ほどのピット槽を保持しているのです。
いかにトーマスウエア&サンズ社が大きく、タンナーとしての歴史があるのかが伺い知れます。
ベジタブルタンニンなめしの工程
それでは実際にトーマスウエア&サンズ社のなめしの工程をみていきましょう。
まず、動物の皮膚である原皮というのは腐らないように塩漬けされるので、塩を含んだ状態で原皮が仕入れられます。
この原皮の仕入れ段階からトーマスウエア&サンズ社は厳選した物だけを取り扱う事を重要視しています。
最高の品質の原皮を伝統的な方法で手間と時間をかけてなめすことが最良の方法だと考えているのです。
なめしの前工程
まず、タンニンで鞣すためには前工程が必要です。これにはおよそ10日間ほどかかります。
そして、仕入れたこれらの皮の全ての重さを計り検査をした後、この塩を抜くためにまず24時間水に浸されます。
その後、毛を脱毛しやすいような成分を含むピット槽に24時間入れられます。
それらが済んだ革は石灰の入ったピット槽に6日間ほど漬けられてから2種類の機械に通され、余分な肉や毛を取り除かれます。
ピット槽によるベジタブルタンニンなめし
毛が取り除かれた原皮は次にタンニンの入ったピット槽に漬けられます。
濃度のうすいタンニン液が入ったピット槽から次第に濃いピット槽へと移していきます。
これには種類により13か月間かかることがあります。
ここで使用されるタンニン液は少なくとも3種類の植物から厳選されてとられた材料がブレンドされています。
このタンニン液の温度や濃度、漬けている時間などは長年の歴史から導かれたトーマスウエア&サンズ社の独自のものです。
その時の皮の個性、現地の気温や湿度の状態により調整が必要となるので経験と知識が求められる行程です。
最終的に仕上げる革の種類によってすべて異なるプロセスが要求されます。
177年の伝統を受け継ぐ老舗ならではの最高技術でベジタブルタンニンで革をなめしていきます。
ベジタブルタンニンレザーの乾燥
何か月もの間、ピット槽に漬けられてタンニンなめしを施された革は仕上げの種類によって更なる工程が施され、乾燥させられます。
この乾燥の工程でおよそ4~6週間ほどの期間を要します。
タンニンレザーの仕上げ
最終的な用途にあわせて仕分けされたタンニンレザーは馬具用のサドルレザーやブライドルレザーに加工されたり、革靴のレザーソールにあわせて仕上げられます。
製品によっては原皮から最終的な革の仕上げまでに15か月以上かかる物もあります。
これだけの手間と労力をかけて皮を革へと変化させて仕上げる英国の老舗タンナーがトーマスウエア&サンズ社なのです。
トーマスウエア&サンズ社のブライドルレザー
いかがでしょうか?
トーマスウエア&サンズ社のベジタブルタンニンレザーがいかに伝統的な手法で製造されている革なのかが理解して頂けたことかと思います。
そしてトーマスウェアのブライドルレザーが世界でも最高水準のクォリティである理由がここにあります。
ブライドルレザーは品質の良いヌメ革にブルームの元であるグリースを丹念に染み込ませる事によって特徴のある革に仕上がります。
このグリースは天然の動物や魚の油、蜜蝋、牛脂などが成分です。
同じく天然素材でベジタブルタンニンなめしをされたヌメ革にこそ、深く浸透して革の繊維に絡み合い、良く馴染むことになります。
トーマスウェア社のブライドルレザーは革の深い内部からにじみ出てきたようなブルームが特徴です。
使用しているうちに再び白いブルームが浮き出てくるさまはあたかも革が息づいているかの様です。
この内部からブルームがにじみ出るような深い味わいも最高のベジタブルタンニンレザーを使用しているからこそと言えるでしょう。
ブライドルレザーの醍醐味を充分に味わえる英国トーマスウェア社の革製品を是非、試してみて下さい。
馬の馬具に使用するほど丈夫なレザーなので長くあなたの伴侶として共に時を刻んでくれる事でしょう。
財布などのエイジングにお勧めのクリーム
基本的にブライドルレザーの長財布などを購入した場合、そのブランドさんがおススメされているクリームなどがあると思います。
ブライドルレザーはその革を製造している、タンナーやキャリアーなどによって性質が異なっています。
販売元はその皮革に合わせたクリームをご紹介されていることでしょうからそちらを使用されるのが一番間違いのない事かとは思います。
ただ、それらが分からなかったり、手に入りにくい場合は
【M.モゥブレィ】
クリームエッセンシャル
を使用される事をお勧めします。
このクリームには動物性油脂である「ラノリン」が配合されていますので皮革のひび割れを防止することができます。
また、ブライドルレザーにおいて重要なロウ分に関しても、「ビーズワックス(蜜蝋)」が入っていますの自然なツヤ感を保つことができるのです。
そして、植物性の天然オリーブ成分で革に潤いも与えてくれます。
ブライドルレザーの乾燥を防ぎ光沢感を出してくれるおすすめクリームです。
表面もべたつかず、さらりと上品に仕上がりますので、是非一度試してみて下さい。
それではまた。
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