店長青山です、
2006年の事です。
かつて従業員として
古着屋ガレージセールに
勤めていた頃、当時の平丸社長に
レポートを提出しました。
内容は
「 買取り型リサイクルショップの台頭と
新庄選手のグローブについて 」
です。
詳しい内容は覚えていません。
ですが、
新庄剛志選手のグローブについては
深い感銘を受けたのでレポートにした
いきさつを覚えています。
その年、北海道日本ハムファイターズを
44年ぶりの優勝に導く原動力となった
新庄選手は優勝翌日の引退会見で
一つのグローブを前に言いました。
「タイガースの1年目に
7500円で買った。
こいつも「無理だ」と、
「もうプレーできる限界だ」
と言っていました。」
新庄選手は高校を卒業し、
ドラフト5位で阪神タイガースに入団。
一番最初にもらった給料で買った
7500円のグローブを現役最後まで
17年間使用し続けてきたのです。
練習用としては他にも
グローブがありましたが
試合ではすべて新人の時の背番号
「63」が刺繍された、ただ一つの
グローブを使い続けました。
プロ野球の世界においても
類まれなる守備範囲の広さと
球界屈指の強肩を誇った新庄選手。
現役当時、ヤクルトの
古田敦也捕手は新庄選手の
守備について
「新庄君の守備は
日本のプロ野球史上の中でも
何本かの指に入る。
日本のトップ中のトップ。
1、2位はイチローか新庄ですよ。
その後ろはちょっといないかな。」
と語っています。
現役時代に10回も
ゴールデングラブ賞を受賞した
新庄選手ですがプロ野球人生を
この一つのグローブだけで
こなしてきたのです。
新庄選手は2000年に
フリーエージェント権利を取得。
当時在籍中の阪神から出された
5年契約12億円のオファーを断り
当時、メジャーリーガーにおける
最低保証年棒であった2200万円の
3年契約でニューヨークメッツに移籍します。
アメリカのMLBでプレーした際にも
試合では常にこのグローブを
使い続けました。
アメリカではこのグローブを触って
手を入れようとした選手と
ケンカしたというエピソードが
あるといいます。
「アメリカの選手は手が大きく
穴が広がると自分の感覚が
なくなるから」
というのが理由。
新庄選手は日本にいた時でも
感覚が変わってしまうという理由から
このグローブだけは他の選手に
手を入れさせなかったようです。
大リーグでは通用しない、という
渡米前の日本での評判とは裏腹に
新庄選手はアメリカでも大活躍。
2002年に移籍したサンフランシスコ
ジャイアンツでは日本人初となる
ワールドシリーズに出場し
センター前ヒットも放ちました。
2003年には再び
ニューヨークメッツに移籍。
アメリカでの3年間を終え
日本球界へ復帰すると
北海道日本ハムファイターズに入団し
2006年の日本一に貢献したのです。
2006年に店長青山が社長に
提出したレポートの内容はこうです。
「 安くて同じような物が大量に
あふれかえる今の時代。
物として価値があると
されるようになるのは
新庄選手のグローブのように
人としての想いが込められて
使い込める品になっていくだろう。
大事に大切に使われて
年季の入った物が本当に
カッコいいとされて価値のある
時代になるのではないか。」
というものでした。
あれから11年の時が経ちました。
残念ながら店長青山のレポートは
かなり的外れだったように思います。
確かに買取り型の
リサイクルショップは
定着しました。
しかし、現在もなお日本では
大量生産、大量消費型の商品が
主流であり街はファストファッションで
あふれかえっています。
恐らくあのレポートは
古着という世界にたずさわる者として
店長青山が希望的観測で
書いたものだったのでしょう。
自分自身の読みの甘さを
認めざるを得ません。
しかし今なお、
心の中に感じる事があります。
新庄選手が一つのグローブを
使い続けた理由は幼い頃から
野球を教え込まれた父親に
「商売道具を大事にしろ」
と言われたから。
なので
グラブだけは常に大事に
遠征先でもテレビの上に置いたり
湿らさないようにしてきたといいます。
渡米後のMLB時代には同僚に誤って
スパイクで踏まれたり、引退までに
4回は補修の大手術をしたそうです。
アメリカから帰って来る時にも
これだけは自分のバッグに入れて
大切に持って帰ってきた
7500円のこのグローブ。
手術した所が中から出て
きたりしていましたが
現役最後の試合でライナーを
捕ったら破けていたそうです。
本当に最後の最後の限界まで
グローブも懸命に頑張ってきたのでしょう。
17年間のプロ野球人生を共にした
このグローブは、新庄選手に野球を
授けてくれた父親が2011年に亡くなった時、
一緒に棺へ入れたそうです。
現代は親から買ってもらった
1万円以上する道具を
高校生が文句を言いながら
学校の部活で使用する時代です。
道具のスペックが高いほど
未熟な技術をカバーできる
可能性があるとすれば
それも仕方のない事かもしれません。
ただ、
店長青山は思うのです。
「 そこに道具に対する
想いはあるのか? 」
と。
「物を大事にするという
心がなければ何を使っても
代わり映えはしないのではないか」
と。
ずっとそのように感じてきました。
しかし、
店長青山のそんな考えも
この11年間の間に
変化してきたのです。
「 物に対する想い入れがないのは
使う人間の責任ではなく
『 提供される時点で 』
物に人の想いが入っていないからでは
ないのか?」
と、
そう考えるようになってきたのです。
新庄選手のグローブには
「商売道具を大事にしてほしい」
という、お父様の願いが
あったように感じます。
何か、人の想いや物語が
感じられる物であれば
使う側の人間も
「自然と物に想いを込めるような
使い方をしてくれるのではないか?」
と、いつしか考えるように
なっていました。
大量生産、大量消費、
ファストファッション全盛の時代に
おいて、ビンテージの古着や
革靴をここまで扱い続けて
来た経験からこその仮説です。
その考えは店長青山の中で
ますます深くなっています。
で、あるがゆえに
今の現在では、物を販売する
小売業としての商売に
難しさを感じています。
お客様にご提供する
商品という「物」。
大切に長く使って頂くためには
それ自体に作り手の想いや
人間性や物語を感じさせる
要素が備わっている必要があります。
ですが、
ほとんどの場合において
商品にその想いがありません。
このような人としての温かみを
感じない「物」に対して
お客様の方で想いを入れてくれ、
という事自体がそもそも
おかしいのかもしれません。
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