80s【DEXTER】LONGWING TIP
MADE IN USA
青山健一です、
今回は【Dexter Shoe Company】の革靴をご紹介します。
以前の店舗をかねてよりご存じのお客様でしたら、ご記憶されているかもしれません。
この【Dexter】、当店のおススメ革靴ブランドベスト3として【FLORSHEIM】【Allen Edmonds】とならび、かつて革靴コーナーにてポップの張り紙でご紹介していたブランドなんですね。
超一流の有名革靴メーカーではないものの、質実剛健でしっかりとした造り。
1990年代に入り【Johnston & Murphy】や【FLORSHEIM】など、アメリカの革靴ブランドがこぞって生産を海外に移したのちも「MADE IN USA」で作り続けたその気概が良い!!
そして、MADE IN USAの革靴にもかかわらず、日本であまり知られていないがゆえのお手頃価格。
そう!!
アメリカ古靴初心者の方に超おススメの安心、安定のブランドなのです。
革靴のクォリティに対し、注目度が低いので探せば割と手に入りやすい。
MADE IN USAの革靴をお探しの方には狙い目の大穴であります。
今回 お届けする内容
販売業界に革命を起こした【Dexter】
【Harold Alfond】
【Dexter Shoe Company】は、1957年にHarold Alfond(ハロルド・アルフォンド)によってメイン州デクスターに設立されます。
当初は伝統的なボートシューズの製造を行っていました。
しかし、1960年代に入ると製品の多様化を図り、ボートシューズの他にもメンズドレスシューズやスニーカーなども製造し始めるんですね。
実はこの【Dexter】の創業者であるハロルド・アルフォンドは、靴業界、いや世界の販売業界に革命を起こした人物として知られています。
彼は、1960年代に【ファクトリーアウトレットストア】という、当時では極めて斬新な販売方法を考案したからです。
ファクトリーアウトレットストアの元祖
80S【DEXTER】LONG WINGTIP
MADE IN USA
ファクトリーアウトレットストアとは、工場で作られた靴を直接消費者に販売する店舗のことです。
工場では、品質管理の過程で不良品や傷物が出ることがあります。
これらは「ファクトリーセカンド」と呼ばれ、一般の市場に出すことはできません。
なので、当時の靴業界の慣習では仲買人に1足1ドル程度で販売していました。
仲買人はそれらを5倍の価格で再販売していたんですね。
しかし、それをみたアルフォンドは、このような靴を自分の会社で販売すればもっと高い利益が得られると考えました。
そこで彼は、【Dexter】のスコウェガン工場に隣接したアウトレットストアを開きます。
ファクトリーセカンド品だけはすぐに商品が無くなってしまったため、そこでは売れ残った在庫品も安く提供しました。
このアウトレットストアが大ヒット!!
なので【Dexter】は、ニューイングランドの街の交通量が多いあらゆる道路沿いにもアウトレットストアを出店し、快進撃を続けるのです。
それを見た他のメーカーは、
「その手があったか!!」
と言わんばかりにこのアイデアに乗っかりました。
デクスターが新しい店を建てると他のメーカーは、こぞってその隣に自分たちのアウトレットショップを開設したそうですよ。
完全にコバンザメ戦法ですね。(笑)
でも、ビジネス的には非常に正しい。
だって、これ、日本や世界に存在している【アウトレットモール】の原型 ですよね。
工場直販のイレギュラー品や在庫品を扱うアウトレットショップやアウトレットモール。
現代においても、自分たちが当たり前に利用しています。
これらは元をただせば【Dexter】が元祖なのです。
アメリカ古靴って、歴史を知ってみると自分たちの生活にも色んな所で関係しています。
こう考えると古靴って、面白いですよね。
世界一有名なボーリングシューズメーカー
【Dexter】WHITE BUCKS PLAINTOE
MADE IN USA
さて、1970年代に入ると、免ず【Dexter】はメンズドレスシューズの分野で評価を得るようになりました。
特にレザー製のウィングチップなどのクラシックなデザインは、多くのユーザーの間で人気を博しました。
また、この時期にはボーリングシューズの分野にも参入しています。
実は【Dexter】、現在では世界で一番有名なボーリングシューズのメーカーです。
自分もこの業界に入るまで知りませんでした。
【Dexter】って、今ではボーリングの会社なんですよね。
1980年代に入ると【Dexter】はメンズドレスシューズの品質やデザインをさらに追求していきます。
ハンドソーンモカシンシューズやコマンドソールシューズなど、革新的な製品が開発され、その名声をさらに高めたのですが。。。
1990年代より先の時代、メンズドレスシューズの市場は極めて過酷な状況へと突入していくのです。
ウォーレン・バフェットが犯した最大の間違い【Dexter】の買収
80s【Dexter】SHORT WINGTIP
MADE IN USA
1970 年代から 1980 年代にかけて急速に成長を続けた【Dexter】には多くの企業買収や、合併の話が持ち込まれます。
しかし、それらの多くは海外生産の拡大路線でした。
【Dexter】はアメリカでの家族経営的な企業スタイルを守り続けてきていたため、そのオファーを断り続けてきていました。
最終的にハロルド・アルフォンドは家族による事業の継続的な経営を妨げないという合意のもと、1993年にバークシャー・ハサウェイへ【Dexter】を売却することを決定したのです。
そう、あの世界一の投資家ウォーレン・バフェットが率いる投資会社「バークシャー・ハサウェイ」です。
その時【Dexter】の買収に支払われた総額は、4億3300万ドル相当のバークシャー・ハサウェイ株。
しかしこの買収こそがウォーレン・バフェットをして、最悪の間違いだったという結果になるのです。
その後【Dexter】はバークシャー・ハサウェイの靴部門として、またたく間に業績を落としました。
バフェットさんは2007年の株主に対する書簡で自分の間違いを嘆いています。
「価値のない事業を買収するために、私は素晴らしい事業の1.6%(現在のバークシャー株の価値で換算すると2200億ドル相当の事業)を譲渡した。」
「これまでのところ、デクスターは私が結んだ最悪の取引だ。」
と。
「2200億ドル」ってどれくらいか計算してみると。。
2023年7月29日の為替(1ドル≒141円)
で計算したら
31兆515億1729万円
ですね。。
バフェットさんが、最も恐ろしい間違いだったというゆえんです。
2001年に【Dexter】のために4600万ドルの赤字を出したバークシャー・ハサウェイの靴部門は、その後一時回復したかに見えましたが、最終的に業績は悪化しました。
そのため1993年から8年後の2001年にバークシャーハサウェイはアメリカとプエルトリコで行っていた靴の生産を終了し、【Dexter】を同社が所有しているH.H.ブラウンシューグループに統合したのです。
【Dexter】は現在、ボーリングシューズを作るメーカーとしてバークシャーハサウェイが所有しています。
【Dexter】買収に対する青山健一の考察
80s【DEXTER】
BALMORAL WINGTIP
MADE IN USA
【Dexter】が急激に競争力を失った理由は、海外の安い労働力で生産された輸入品に対抗できなくなったからです。
1999年にアメリカで販売された13億足の靴のうちの93%は、安い賃金が主流である海外から輸入されたものだったそうです。
市場で売れる93パーセントの靴が安い海外製品となってしまっては、MADE IN USAの【Dexter】が生き残るすべはありません。
【Dexter】とウォーレン・バフェットさんの名誉のために言っておくと、1993年にバークシャー・ハサウェイが【Dexter】を所得した当時、この会社はバフェットさんが
「これまでのビジネス人生で見てきた中で、最もよく経営されている会社の1つ」
と言うほど、ピカピカに素晴らしい会社だったそうですよ。
ではなぜ、【Dexter】は没落してしまったのか?
ここからは青山健一の個人的な見解です。
「1993年まではかつての世界だった」
1993年にバフェットさんが【Dexter】を買収した時、「この会社はビジネスの宝石だ」と評したといいます。
自分は後にこの逸話を初めて知った時、こう思ったことを今でも覚えています。
「そうか、1993年まではかつての世界だったんだな。」
と。
1990年代というのは【Johnston & Murphy】や【FLORSHEIM】などの会社も生産を海外に移した時期と重なります。
アメリカ国内生産の革靴がコスト面で苦しくなるのは時代の流れとして、当然バフェットさんも理解していたはずです。
それを重々承知の上で、それを上回る利益を得られると読んだからバークシャー・ハサウェイとして【Dexter】を買収したわけです。
にもかかわらず、そこからわずか10年足らずでバフェットさんの今までの人生で予測もできない出来事が起きた。
一気に進んだグローバル化です。
「オマハの賢人」と呼ばれるバフェットさんが予測もできないほどの世界の変化。
これを引き起こしたものは一体何か。
自分個人的には「インターネットの普及」だと思っています。
インターネットが個人まで普及したのが、Windows95が発売された後の96年から。
1996年には「Yahoo!JAPAN」、2000年には日本でも「Google」などによるサービスが始まっています。
【Dexter】がバフェットさんも予測できないほど、時代の波に飲まれてしまった一つの原因。
その理由の一つとして個人的にはインターネットの存在考えています。
世界のあらゆるビジネスはインターネットの普及でその姿を変え、時代に淘汰されていきましたが革靴の業界でも影響は大きかったのではないでしょうか。
以降、アメリカ革靴はかつての古き良き時代の面影をだんだん失っていると思います。
【Dexter】も現在では、ドレスシューズを生産していません。
ブランド自体はボーリングメーカーとして存続していますが、革靴そのものは絶滅ブランドになってしまいました。
かつては「手軽に安価で入手できる」当店おススメ革靴ブランドとしてご紹介していましたが、近年では以前のようにはいかなくなってしまいましたね。
これも時代の流れでしょうか。
かつてアメリカが憧れだった時代の革靴
今回は【Dexter】というアメリカ革靴の一ブランドの歴史から、ちょっと世の中の流れや風景を垣間見てみました。
古靴にはそれぞれその個体が生まれてきて、そして現代に至るまで残ってきた歴史があります。
長い時代の淘汰を経てもなお、現在にその存在をとどめる古靴。
そこに想いをはせると、新品の品物には決して背負うことのできない時間の重さとロマンを感じますね。
今回ご紹介するのは現在とは違ったかつての世界、自分たちの世代にとってまだ、アメリカがあこがれだった時代に作られた革靴です。
今となってはもう作られていない【Dexter】。
サイズの合う方は是非、試着に来てください。
それではまた!
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80s【DEXTER】LONGWING TIP
MADE IN USA
80s【DEXTER】LONGWING TIP
MADE IN USA
サイズ 9 1/2 ウィズD
(目安 27cm ~ 28cm 位)
¥14000-(+tax ¥1400-)
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80S【DEXTER】LONG WINGTIP
MADE IN USA
80S【DEXTER】LONG WINGTIP
MADE IN USA
サイズ 9 ウィズD (目安 26.5cm ~ 27.5cm 位)
¥14000-(+tax ¥1400-)
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【Dexter】WHITE BUCKS PLAINTOE
MADE IN USA
【Dexter】WHITE BUCKS PLAINTOE
MADE IN USA
サイズ 9 ウィズM(目安 27cm ~ 28cm 位)
¥12000-(+tax ¥1200-)
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80s【Dexter】SHORT WINGTIP
MADE IN USA
80s【Dexter】SHORT WINGTIP
MADE IN USA
サイズ 7 1/2 ウィズM
(目安25 cm ~ 26cm 位)
¥13000-(+tax ¥1300-)
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80s【DEXTER】BALMORAL WINGTIP
MADE IN USA
80s【DEXTER】BALMORAL WINGTIP
MADE IN USA
サイズ 8 1/2 ウィズ WW
(目安 26.5 cm ~ 27.5cm 位)
¥13000-(+tax ¥1300-)
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