「 左右(さう)極限を知らなければ

中道(ちゅうどう)に入れない 」

 

俳優としても活躍した
落語家 2代目桂小金治が
まだ、前座だったころの話

 

亭合(流派)の違う若い落語家の
高座を観た

 

当時まだ真打になったばかりの
柳家小三治、のちの人間国宝
5代目柳家小さんの落語である

 

小金治は若き日の小さんの高座に
惚れ込み、自らの師匠に頼み込んで
落語の稽古をつけてもらうよう
話を通してもらった

 

こうして小金治は
小さんから噺の稽古を
つけてもらう事になる

 

毎日のように流派の違う
小さんの家へと通い、小金治は
稽古を続けた

 

その頃、小金治は稽古の他に
小さんの家に行く楽しみがあった

 

戦後間もない時代

食糧事情も悪い頃にあって
小さんの家に行くと白米と
味噌汁のご飯を食べさせて
くれるのだった

 

「さすが小三治師匠、人気も
実力もある噺家はやはり違うな」

 

と、貴重な銀シャリの
ご飯を食べられるのが
とても嬉しかったという

 

ある日の事

稽古をつけてもらった小金治は
いつものように銀シャリの食事を
食べさせてもらう

 

帰り際、駅まで行くと
小さん師匠の家に忘れ物を
してしまった事に気が付いた

 

今来た道を引き返し戻ると
師匠の家族4人が食事をしている

 

見ると

師匠の家族は4人でわずかな芋を
分け合って食べていた

 

柳家ですらないよそ者の前座に
銀シャリを食べさせて、自分達は
芋を食べていることを知り
小金治は家への帰り際、電車の中でも
涙が止まらなかったという

 

 

柳家小さんの直弟子でもあった
落語家 立川談志は生前

「 落語家になるものは前座のうちに
貧乏をしろ 」

と弟子に教えていたそうだ

 

落語のテーマは飢えと寒さだからで
それを知らない者は落語を描く事が
できない、というのが立川談志の
信念だったらしい

 

噺の中に飢えと寒さの苦しみを
表現する事で人の心を引きつける
落語を描いていたのかもしれない

 

 

左右極限を知らなければ
中道に入れない

 

という考え方がある

 

仏教では極端に走らず
中道に入るという教えがあるが
その為には極端の意味を知る必要が
あるという事である

 

貧しさを肯定するつもりは
全くないが、それを逃れる為に
卑しい手を使う事は極限を知る事に
繋がらない

 

きちんと正しく自分の貧しさに
向き合わない人間には
人生に深みがうまれない

 

ずるい事をしたり、人をだましたり
誰かのお金をごまかしたりする事で

 

美味しいご飯を食べたり
欲しい物を買ったり
好きな場所に行ったり
車を買ったり
家を持つ事ができたとしても

 

お前はフェイクだ

お前の人生は偽物だ

このインチキ野郎

 

と、己の人生から
ケチを付けられて死ぬまで
生きていくのである

 

そうであるならば
自身の正しい実力で現実の
貧しさを知る事が

自分の本当の人生を生きる道に
繋がるのではないか、と
そう感じている

 

 

お笑いトリオとして
テレビで長年活躍し続けている
ダチョウ倶楽部さんの売れない
下積み時代の話がある

 

ダチョウ倶楽部さんには
その当時、一つのルールが
あったそうだ

 

それは

「どんなに苦しくても
お金の為にバイトはしない」

ということ

 

「オレ達はお笑いをやっていくのだから
バイトをしている暇があったら
その時間でネタを作ろう」

 

と、辛くても貧しくても
ネタを作り続けたそうである

 

 

どこまでそのルールを守れたのかは
定かでないが、ダチョウ倶楽部さんは
そうやってお笑いに対して
一生懸命にやっていた

 

そうすると

どこからかその話を聞きつけた
人たちが出てくる

 

お笑い業界の先輩などが

「お前らバイトもしてないんだって!?
メシ、食ってんのか?」

と、ご飯をご馳走してくれたり
仕事に声かけてくれたりと
目をかけて可愛がってくれたそうだ

 

その結果、今の
ダチョウ倶楽部さんがある

 

人は一生懸命に頑張っている人を
見ると心が動かされてしまうのである

 

 

極端な生き方をずっと続ける事は
出来ないが、その両端を知る事には
意味がある

 

貧しさを恐れるあまり
本当に自分が求める生き方から
目をそらせ続ける限り、極限を
知る事は出来ない

 

 

本当の自分を知る生き方に
踏み出す勇気が出ない時は

 

ダチョウさんの熱湯風呂でも
動画で見たらいいのではないか

 

と、考えている今日
この頃なのである

 

 

 

 

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