正直、怖いと思っていた

 

真黒な姿で突然現れ
大きな体でびっくりするような
声を出す

 

彼らを見ると
なんとなく心が不安な感じに
なった

 

その姿を見るだけで
なにやら不吉なものを感じる

 

カラスのことである

 

中世の時代から魔女の使いとされ
悪魔の家来、死肉をあさる
卑しいものとされてきた

 

現実にもフンを落とし
ゴミをあさり
時として人を攻撃する

 

店舗の建物のゴミ捨て場を荒らしては
生ゴミをまき散らす

 

木の板でつい立てなどを作ったり
奴等の対応には困らされてきた

 

おそらく多くの人が
彼らに困らされたことが
あるだろう

 

ある時、いつものように
カラスが電柱の上で
大きな声で鳴いていた

 

なんとなく苦々しい思いで
彼らの下から見上げていたが
その時なぜか、ふと思ったのだ

 

目に映る世の中の森羅万象は
すべて自分の心の中の
心象風景だという

 

そしてそれらのものには
すべて何かしらの意味が
隠されていると

 

かーかー鳴いているカラスを
見上げて僕は思った

 

あのカラスは今、自分に
何かを伝えているのではないか

 

自分では気が付かない何かが
今、目の前で起こっていると

 

カラスはとても
頭がいいことが知られている

 

古来より彼らは慧眼の象徴

 

物事を見通し、それを伝える
神の使い

古代エジプトでは太陽の鳥だ

 

サッカー日本代表のエンブレムは
3本足のカラス

 

日本の初代天皇
神武天皇を導いたヤタガラスである

 

それ以来僕はカラスを見ると
今、何かが目の前で起こっているんだと
考えるようになった

 

よくよく見ると
漆黒のカラスは
とてもカッコよかった

 

彼らは僕が気付いていない何かを
伝えてくれているんだ

 

カラスを見るとその日は
注意深く過ごせるようになった

 

それ以来、心構えひとつで
何かが変わることを
幾度となく感じることがあった

 

ドアを開けているとお店の中に
蝶々が飛んで入ってくることが
まれにある

 

これは何を伝えているのだろうと
考えていると、その日はたいてい
久しく会っていなかった人が
訪れてくるのだった

 

そしてそれはたいてい
女の人なのだった

 

 

ある時

僕は憔悴しきっていた

 

やっていることは
間違っていないはずだった

 

努力はずっと続けてきている
はずだった

 

しかし、結果が出ない

 

結果を出すためにやらなくては
いけない事すらできない状況に
ひどく焦りを感じていた

 

なぜこうなってしまうんだ

 

どうしてオレには
こういう人生が来るんだ

 

閉じこもった気持ちで
胸の痛みを感じていると
水のように垂れてきた鼻水が
口の中に入ってしょっぱかった

 

顔はじわじわ流れ出てきた
涙でぐちゃぐちゃだった

 

だが

全ては自分の人生に起こったことだ

 

自分の人生に起こったことは
すべて自分の責任だ

 

状況のせいではない

オレはもう誰かのせいにはしない

 

100%自分の人生に責任をとる

 

そうしよう

 

ダメならそれでしょうがない

 

自分で100%責任取れば
それでいいんだ

 

がんばろう

 

 

僕はパソコンの前で一人で
泣いていたが、鼻水をすすって
Gメールのフォルダーを見た

 

そこには見たことのない
アドレスからメールが来ていた

 

時間を見ると
メールが来ていたのは
今から17分前の事だった

 

 

それから二日後

僕は新宿のヒルトン東京の
ラウンジでメールをくれた方と会った

 

その方は九州から一時間遅れで着いた
飛行機を降りると、羽田からタクシーで
急いでやってきてくれた

 

12時の約束の時間にはきちんと
間に合っていた

 

おもっていたより、若々しく
柔らかい物腰とやさしい笑顔を
もった丁寧な方だった

 

誠実な方に違いないと
一目で感じた

 

後で調べて知ったことだが
その方はインターネットの黎明期から
活躍された起業家だった

 

僕は知らなかったが
オンラインの世界では
かなり有名な人だった

 

その方のお話はこうだった

 

僕もそろそろ上のレベルが
見たくなりました

 

今まで20億円規模の会社は
つくったこともあるので
次は100億円のレベルに行きたいと
思っています

 

ですので一つの事業のある部分を
青山さんにお手伝いしてもらいたいと
思っています

 

お手伝いしてもらえますでしょうか

 

 

本物中の本物というのは
こんなにも丁寧で
腰が低いものなのか

 

全然大したことないにもかかわらず
偉そうにしている人間が
本当にちっぽけに思える

 

 

そのある部分をあらかじめ
調べておいた僕は
思うままを伝えた

 

その事業は今でもかなりの利益を
あげている優れたビジネスモデルらしかった

 

しかし僕が見る限り
かなり大ざっぱになっている部分もあった

 

なのでそれを直すだけで、一気に業績もあがり
ダントツで業界一位になれると思います
と伝えた

 

その方はインターネットの黎明期において
伝説の人物なんである

 

今思えばインターネットの世界で生きてきた
日本でもトップクラスの起業家に
良くもそんなことが言えるなという感じだ

 

だが、その方はメモを取りながら
真剣に僕の話を聞いてくれた

 

そして僕は言った

 

その部分を直せば業績が上がることは
間違いありませんが、それに関しては
僕は専門家ではありません

 

恐らくなのですが、僕がやるよりも
プロ中のプロに頼めば簡単に
業績が上がります

 

なので、僕がそこにかかわるよりも
プロに頼んだ方が良いかと思います

 

僕はその分野で日本一であろう
コンサルタントが知り合いにいたので
その名前を伝えた

 

その方は
わかりました、改めて考え直してみます
と言い、僕の提案を検討してくれる
ことになったのだった

 

 

その面会の帰り道、電車の中で
僕は考えていた

 

これで良かったんだ

 

その方と今日からビジネスを
行う事にはならなかったが
それで良かったんだと思った

 

僕はその日、面会するにあたって
その方の為になることだけを考えて
それを伝えると決めていたのだった

 

僕が伝えたことが正しかったかどうか
わからない

 

でも、その方のビジネスにとって
良いと思う事だけを考えて
それを正直に伝えた

 

その道のプロに頼んだ方が
間違いなく業績をアップできる

 

そうすることがいいことだけは
明白だった

 

自分が出るべき所ではないと
判断したのは正しかったと思った

 

しかし

 

3日前には夢にも思わなかった

 

こんなことが実際に起こるなんて

 

 

その日、いつものような
お弁当を持っていなかった僕は
かなり遅い昼食を外食で済ませた

 

その後、店についた僕は
お店のオープン準備を始めた

 

店内から外に
マネキンなどを出していると
ふと、頭の上で声がする

 

 

 

見上げると建物の上で
2羽のカラスが鳴いていた

 

 

 

【※注意】今日は4月の1日です!!

 

 

 

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