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69~70s VINTAGE【BECK】ARNLEY
SINGLE RIDERS JACKET

 

店長青山です、

今回は極上のビンテージRIDERES JACKETが入荷しました。1969~70年代の『BECK』社の物です。

 

Beck Distributing Corpの歴史

 

【Beck Distributing Corp】は1914年にアメリカのニューヨークで設立された会社。

 

創業当時に人気の出始めたオートバイのアクセサリーやスペアパーツを扱っていました。

 

革のヘルメットやグローブ、白いスカーフやライディングスーツなどを輸入して販売していたのです。

 

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第一次世界大戦が勃発するとベックは通信兵が戦場で使うサイドカーをアメリカ陸軍に納入する契約を取ります。

 

オーストラリア製のサイドカーを軍に納入する大きな取引を成功させると戦後には急成長しているモーターサイクル市場へバイクの修理部品とアクセサリーのカタログを提供し販売を拡大。

 

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ニューヨークのハーレム地区131ストリートに本部を置き、イギリスなどの国から輸入した部品を全米に提供していきました。

 

1979年にオートバイ事業を閉鎖するまでアメリカ最大のバイクパーツ販売会社として業界に影響力を持ち続ける事となります。

 

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ハーレーダビットソンやインディアンやなどのバイクパーツを手がけ、第二次世界大戦の前にはすでに全米最大規模で販売していました。

 

また、特にTriumphやAJS、Norton-Villiersなど英国車に焦点を当て全米に紹介した功績も大きいです。

 

triumph

AJS

Norton-1961

 

ベック社の創業者

 

この会社の創業者は1914年当時、まだ20代だったベックです。5回の倒産を繰り返しては起業したという筋金入りのビジネスマンでした。

 

この創業者のベックですが調べていくと、名前がよくわからなくなってきます。

「アーヴィング・ベック」

とする場合と

「ジャック・ベック」

とする説があるのです。

 

1962年に出されたアメリカの有名な

 

american-motorcycling
【American Motorcycling】
1962年3月号

という雑誌には

「Irving Beck」

と紹介されていますし、【BECK/ARNLEY】社のヒストリーを見てもアーヴィングとなっています。

 

ですが、日本では基本的に「ジャック・ベック」として説明しているサイト様が多いようです。

 

これは店長青山の憶測でしかないのですが、ベック社と繋がりの深い【SCHOTT】の創業者が関係していると個人的には考えています。

 

SCHOTT社の創業者は

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「Irving Schott」

「Jack Schott」

というロシア系ユダヤ人移民であった兄弟。

 

このショット兄弟のアーヴィングとジャックという名前。

 

どちらかが【BECK】社の創業者の名前と同じだったのではないでしょうか?

 

そのため、ベックとショットの創業者の名前が混同されてしまい、2通りの説が出ているのではないか、と勝手に推測しています。

 

海外の「アーヴィング」という説明。日本の「ジャック」という説。

 

店長青山的にはどちらも同じぐらい有力だと思います。

 

オフィシャルのホームページで「アーヴィング・ベック」と紹介されていながらも「ジャック・ベック」の方が正しいのではないかな、と
個人的には考えていたりします。

 

いずれにせよ、ベックというのはモーターサイクルジャケット誕生と発展の歴史に欠かすことのできない会社です。ですが、よくわかっていない部分も多いのですね。

 

過去の歴史を調べつつ、自分なりに色々と考察を加えていくのもビンテージの革ジャンの楽しみ方だと思います。

 

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なので、店長青山はこのように自分勝手に推測をして遊んでいるのです。

 

全米最大のモーターサイクルディストリビューター

 

ベックは会社の名前の通り、ディストリビューターとしてスタートしています。

 

ディストリビューターとは自社で一度商品を購入してから独自に販売をする会社の形態。要は、卸売業という事ですね。

 

ですので、ベック社は商品を生産するメーカーではなく販売だけを行ってきました。

 

全米中にモーターサイクル関係のアクセサリーパーツを提供し広めてきた功績があります。

 

現在、世の中でレザーのライダースジャケットが一般的に広まっているのはベック社の存在があったからなのですね。

 

ここで少し考えて頂きたいのはベック社は卸業者なので

 

「生産を一切行っていない」

 

という点です。

 

で、あるならばベックのタグが付いている商品だとしてもそれらは全て

「外注で他の会社が生産した品」

という事になります。

 

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【BECK】のライダースジャケットを生産していたのは・・・

 

このような理由からベック社は卸業者なのでカタログに載っているアイテムの全ては外部の会社が作った物となります。

 

【BECK】のタグがつく商品においても、すべてそれは同様です。モーターサイクルジャケットもしかりで革のライダースはみんな外注商品となります。

 

では、一体【BECK】のレザージャケットはどこが生産していたのかというと1つは第二次世界大戦以前の超名品とされる幻のブランド

 

【Leathrer Togs】レザータグス 社。

 

もう一つわかっているのはベックとは関係の深い

【SCHOTT BROS.】社

になります。

 

【BECK】と【SCHOTT】の関係性

 

1913年にニューヨークで創業し現代までも続いているアメリカ有数のレザーブランド、【Schott】。

 

Riders-Schott-bros

 

このショット社ですが創業から半世紀ほどたった1960年代後半まで製造だけを行っており、自社で販売を行う事はありませんでした。

 

この【Schott】社が作ったレザージャケットの販売を全て引き受けていたのが【BECK】だったという事になります。

 

販売だけを行う卸売業の【BECK】と製造だけを行い、販売を任していた【Schott】。

 

この2社の関係はレザージャケットの発展の歴史に大きく貢献していきます。

 

ベックは自社のタグをつけたレザージャケットの製造を【Schott】に依頼していたのでベックの名品とされるモデルも中身はショットという事が多いです。

 

1969年にArnley Brake Shoe Company と統合

 

アメリカは第二次世界大戦後になると海外の自動車を輸入するようになります。

 

オースチンやモーリス、MGなどの英国車が人気でどんどん輸入されるようになりました。しかし、当時それらの自動車パーツを扱っている所が米国には、ほとんどありません。

 

英国車のメーカーはすでにアメリカでバイクパーツの販売経路を確保していた【BECK】に話を持ちかけます。

 

これによりベックは新たに自動車のパーツ業界へと参入する事になるのです。

 

beckarnley

 

英国車のブームの後にはフランス車の人気が高まりました。

 

ルノー・プジョー・シトロエンなどが輸入され、そして60年代にはドイツから来たフォルクスワーゲンがアメリカで旋風を巻き起こすのです。

 

beck-arnley

 

1000万台以上ものVWビートルがアメリカで販売された影響によりベックも主要ビジネスをバイクから自動車へと変化させていきます。

 

そして1969年には大きな合併が行われました。

 

ピッツバーグで1956年に創業したアーネリー・ブレーキ・シュー・カンパニーと合併。アーネリー社と統合された事により自動車部品業界へ更に大きな影響力を持つようになります。

 

65年間もの長きに渡り、アメリカのモーターサイクル史に大きな影響を与えてきた【BECK】。

 

しかし、自動車業界へのシフトのため合併から10年後の1979年にオートバイ事業部門を閉じる事となりました。

 

今回入荷のお品は1969年に行われたアーネリー社との合併から、およそ10年間の間に作られたジャケットと推測されます。

 

名品【BECK】666 RACING SHIRTS

 

ベックのビンテージライダースはアメリカのモーターサイクル市場の中では名品とされています。

 

その中でも店長青山が

buco-j-100-leather-shirt
【BUCO】J-100 LEATER SHIRT

 

と並ぶシングルライダースの傑作だと考えているのが

 

beck-leather-racing-shirt
【BECK】LEATHER
RACING SHIRT

モデル、【666】です。

 

beck-racing-shirt

beck-shirt

 

モデル666のジャケットも全てかどうかは定かでありませんが生産は【Schott】社が手掛けていたものとなります。

 

【BECK】666は名品のため、そのクォリティの高さで世界中のマニアから尊敬を集める日本の復刻ブランド「トイズマッコイ」さんでも手がけていますね。

 

TOYS-McCOY-beck
TOYS McCOY さん復刻
BECK 666 SINGLE
RIDERS JACKET

お値段は

TOYS-McCOY-beck-1

18万3600円

です。

 

今回入手したシングルライダーズジャケットはこの666の形を踏襲しています。

 

モデル名、品番がわからないのですが少なくとも666の後継モデルではないかと考えています。

 

【Schott】641シングルライダースジャケットとの違い

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1960年代後半までベックのライダースは生産をショット社に委託していましたので形もショットの641と似ています。

 

ただ、現行のショットに比べると若干サイズ表記よりも実物が小さい感じがあります。今回のお品はサイズが40なのですが、現行ショットのモデル641に比べると作りが細めです。

 

サイズ的には現行のショット641の38くらいに当たるかと思います。その若干細めのシルエットがスタイリッシュでたまらなくセクシーです。

 

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店長青山はベックのライダースを偏愛しています。本当に若い頃から色々と25年ぐらいかけて色々なシングルライダースを探してきました。

 

ベイツやブルックスやショットなどを購入してきました。

 

BATESの60年代シングルライダースは革が厚く重たかったのですが質感がとても柔らかいものでした。それよりも重量的に軽いブルックスのシングルよりも着ていて全然疲れ無かった事を今でも覚えています。

 

洋服は重さだけで判断してはいけないという事実をこの革ジャンに教えてもらいました。

 

ブラウンレザーのシングルでとてもお気に入りでしたが、身体をシェイプしたらサイズが大きくなりました。肉体の進化を優先した為に
このライダースは手放しました。

 

ショット641シングルの形は個人的に現行品でもかなり好みです。

 

古着屋としては60年代ビンテージで胸ポケットの形が「逆ハの字型」になっているショットのシングルライダースがどうしても気になって仕方がありません。

 

しかし、この年代の「逆ハの字型」ショットは中のライニングがキルティングなのです。そして革の質感が気持ち、少し薄く思えるのです。

 

あくまでも個人的な主観ですが中のライニングがキルティングではない方がどちらかと言えば好みです。

 

これはシングルに限った話でダブルのライダースは中がキルティングでもいいと考えています。シングルでキルティングだと春先に着る時、少し違うと感じてしまいます。

 

なので、ショットのシングルライダースであれば古いビンテージよりも現行品に近い641の方が好みだったりします。

 

そのように色々と紆余曲折はあったのですが2016年の冬にやっと自分好みの品を見つけました。

 

「これなら一生着ていけるだろう!」

 

と、自分的に満足のいく品としてようやく入手した私物です。

 

実はそれは、今回のモデルと全く同じベックの物なのです。

 

BECK/ARNLEY レザーシングルライダース 1969~1979年モデル

 

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右が店長青山の私物で左が今回入荷の品です。

 

BECK-ARNLEY-single-riders-1

 

写真で見ると画面の下が店長青山の私物で画面の上が今回入荷のものです。

 

このモデルについている【BECK-ARNLEY】の白タグには店長青山の知る限り2種類あって一つが今回入荷の物。

 

もう一つは今回入荷のタグの記載に加えて【MADE IN JAPAN】という文字が入っているものです。

 

今回の品は生産国の記載が何もない分、初期型だと推測されますのでアメリカ製で間違いないと考えています。

 

おそらく生産は【Schott】社だったのではないかと思います。

 

BECK-ARNLEY-single-riders-2

 

今回入荷の品はサイズ40なのですが店長青山の私物はサイズ38です。

 

しかし、私物のベックより、今回入荷したライダースの方がコンディションがかなり良すぎるのです。

 

店長青山の私物はライニングがかなり切れていて、自分で頑張って縫い直しましたが入荷の品は穴一つありません。

 

現行品で出ているショットの641は個人的にとても好みのライダースです。しかし、古いベックと比べると革質がまるで違ってどう考えても昔の物の方が良いと感じてしまいます。

 

新品で購入すれば10万円は下らないクォリティです。

 

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ガレージセールは古着屋です。こちらとしてはお客様に中古品を販売する立場です。なので、

 

「今の物より古い物の方が断然いいですよ!」

 

と言えば、セールストークになってしまう事は理解できます。

 

しかも何度も言いますがショット641のように個人的に古い物よりも新しい物の方が好きだったりする品もあります。

 

なので、古着屋だからと言って必ずしも「昔の物の方が良い!」とは言いたくない、と考えています。

 

しかし、革の製品に関してはそう言わざるを得ないほどクォリティに差が付いているのです。

 

ライダースにしろ革靴にしろ現代ではコスト削減の為、海外に生産拠点を移し革製品を作るメーカーが多くなりました。それはアメリカブランドと言えども例外ではありません。

 

中米やインドなどで製品を作っています。たとえアメリカ国内で製作をしていたとしてもです。

 

昨今では企業としての効率性が重視され

 

「手間暇をかけて良い物を作る」

 

という感覚は失われてしまっています。大量生産、大量消費の商品があふれ続けています。

 

昔に比べて革製品の品質はライダーズジャケットでも革靴でもどの国でもどのブランドでも下がっている傾向があるのです。

 

そんな、21世紀も20年近くたとうとする現在に掘り出したお品が今回のジャケットです。

 

正直に言いますが今回のこちらのお品、無理に購入頂く必要はまったくありません。

 

個人的にベックならサイズ違いで40も保持していたいというのがぶっちゃけた気持ちです。

 

春先には中にカットソーなどを着てサイズ38を着用したいです。

 

寒い時期にはサイズ40の中に厚手のパーカーなどを着て着まわしたいと考えています。

 

なので、ある一定の期間だけは店頭でお見せ致しますが、しばらくしたら、引き下げて私物にしようと考えています。もちろん、その際にはきちんとフェアにこちらのブログで売れなかったため私物にする事をご連絡します。

 

くれぐれも言っておきますが今回お品、無理に購入頂く必要は全くありません。

 

ただ、当店では今後このコンディションの【BECK】を入荷する事は不可能でしょう。それだけは確実に保証いたします。

 

それではまた!

 

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69~70年代ビンテージ【BECK】ARNLEY
シングルライダースジャケット
サイズ40 ¥47000-(+tax ¥3760-)

※おすすめ参考記事


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マーロンブロンドが映画【乱暴者】で着たレザーライダースの正体

 


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ライダースジャケットの選び方
 

【 ※ 今回のジャケットのお手入れ 】

 

今回、ベックライダースジャケットのお手入れには【M.モゥブレイ】の

 

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ビーズエイジングオイル 

を使用しました。

店長青山はライダースジャケットには基本的にこれを使用しています。

 

ミンクオイルとかマスタングペーストとかワセリンとか、色々と革ジャンのお手入れ情報が入り混じっています。

 

店長青山も「結局、何がいいんですか?」という質問をよく受けるのです。

 

しかし、実際に今まで一度も使った事がないのあれば、

 

「とりあえず、ビーズエイジングオイルを使ってくれ!」

 

という感じです。

 

これがあまり良くないと感じるのであれば、それから他を試してみて欲しいと思います。

 

こちらはミツバチの巣から抽出した天然のミツロウを主成分としたナチュラル栄養クリームです。

 

ミンクオイルのようにベタつかず、サラッとした仕上がりになるのが特徴で、自然なツヤが出せますし防水性も保てます。

 

手で、クリームをすくうと指の体温でかなり伸びやすくなるので直接、指で塗り込んで使用しています。

 

天然成分のクリームなので個人的には手荒れなども全く気にする必要が無いで安心して使用できます。

 

レザージャケットにおすすめのクリームです。

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